相変わらず日本列島は寒暖の差が激しいながらも、あっという間に東京の桜はほぼ満開となりました。(梅は遅かったのに…今度は早すぎてちょっとついていけてない気もします。)
3月19日(火)marunouchi café SEEKにて定例プログラムEnglish Clubを開催しました。今回のテーマは日本の自殺です。重たいテーマですが、この問題に真正面から取り組み、駐日EU代表部経済担当官や大学講師の本業をこなす傍ら、3年という年月を費やし、全て自費で、たった3人で約100人の人たちへのインタビューを重ねて1つの映画を作り上げた外国人がいます。在日15年のアイルランド人、Rene Duignan氏です。
レネさんはこんなに住みやすい、大好きな日本であるのに、なぜ世界の中でも高い自殺率なのか、自殺の名所があったり、自殺になんとなく寛容な空気があるのか、そして彼の身近におきた出来事などにもショックを受けて行動を起こしました。完成した映画のタイトルは「自殺者1万人を救う戦い」。昨年日本の自殺者数は15年ぶりに3万人を下回ったことがニュースにもなりましたが、それでもこの数字はOECDの統計などによると以前欧米と比較して高いことに変わりはありません。それでも昨年減少したのは東日本大震災の影響で日本人が「絆」の大切さや生きていることのありがたさを改めて意識したこととも関係があるのではないでしょうか。レネさんは、さすがエコノミストらしく様々なデータを集めて分析される一方で、直接多くの人々に会い、日本ではタブーとされていることにもあえて触れ、またボランティアで自殺防止を支援している人からの「人は話を聞いてもらいたいと思っている」というシンプルな言葉や地道な活動もクローズアップされました。この映画は「死」にフォーカスするのではなく、いかに「生」にもっていくかがテーマであり、レネさんの熱い思いがお話からも伝わってきました。彼はもちろんこの映画を営利目的で作ったわけではないのですが、むしろ持ち出しばかりで声がかかるたびに各方面にDVDを無料で配ったり、ついにはオンラインで無料配信することも決意し現在公開されています。今彼自身やこの映画が今、メディアや国会など各方面で大変注目されているのは(このEnglish Clubが行われた日もNHKの取材が入りました)、一人の外国人がここまでのエネルギーを注いで日本のために具体的に行動し映画という形でメッセージを表現し、日本人を喚起し、私たち自身の問題としてmovementを起こして欲しいという強い志に心動かされるからでしょう。
後半のQ&Aはご参加の皆様からも様々な意見や質問が多数あり、大変熱心なセッションとなりました。また、深刻な話題にもかかわらず、暗い気持になるというより前向きに、パワーをもらったのはレネさんの見事なプレゼンと真剣さ、そして懐深く明るいお人柄ゆえであったと思います。とても刺激をうけた時間でした。
Saving a War on Suicide in Japan
<お知らせ>
3月26日(火)午後8時からのNHKBS1ワールドWave Tonightにて先日のEnglish Clubの様子を含めてRene Duignanさんの活動 が紹介される予定です。(この日は放送が20:00からとなります。ご注意ください。)